Zen30 (5)どんな個性のヨットなのか

新型艇の開発 1

横山晃先生が生涯を通して追及した設計テーマは、海と深く接触していくためのヨットであった。
そのヨットは、あらゆる季節、あらゆる気象に耐え、しかも十分に長い時間を海で過ごせる船、充分に大自然に関心を持てるような、気持ちの余裕を持てるヨットである。
私はこれまでに12000時間以上のセーリング時間を過ごした。しかしまだ海に出て探求したいことが残っている。そのために造るヨットがZen30である。

Zen30にはどのようなヨットが適切であろうか。ヨットの個性は人間と同様に、外面と内面とで現わされる。外面性とは、ヨット大きさ、豪華な内装、それに便利な機器類だといえよう。ヨットの内面性とは、操縦のしやすさ、嵐に耐える耐候性、航続性能である。

私が必要とするヨットは、外面性でいう大きさは、シングルハンドで操ることができる最大のサイズとなる。たとえ何人で乗ろうとも、自分自身で操ることができないようでは、スキッパーとしての責任を果たすことはできない。自分一人で、すべてをコントロールできるヨットの最大のサイズは、全長30フィート、排水量3tまでであろう。
内装に関しては、北欧製の家具に見られるように、シンプルではあるが考え抜かれた機能性と、細部までの美麗な仕上げを必要とする。
内面性については、あらゆる海象に耐え、あらゆる海域で航海でき、長距離の航続性能を兼ね備えるヨットを求めている。

このような個性を持つFRP製のヨットは、国内外ともに存在しないので、自分で造る以外にない。木造では、札幌在住の岡本さんがZen30と同型艇を自作中である。岡本さんはZen30のモールド造りにも協力してくれている。

現在わが国には、ヨットビルダーは2社しか残っていない。ヤマハや日産などの大手メーカーはヨット事業から撤退した。青木ヨットは残された1社として、Zen24シングルハンド外洋ヨットおよびZen15ツーリングディンギーを、自社でモールド(FRP生産型)を開発して、FRP製のヨットを建造している。

ヨットのモールドを製作する技術を保持しているメーカーは、数少ないのがわが国の現状である。モールドの製作には、まず設計図から原寸大の外形を正確に描き出す原図作業が必要となる。原図は、木造船時代から親方の作業として最も大切な工程であった。そして原図から正確な船型をかたちづくるには、伝統的な木工技術が欠かせない。そのためにはカンナやノミといった手工具の扱いに熟練しなければならない。刃物を研ぐ技術も必要になる。

新しいヨットを開発するには、このような伝統的な木造艇建造技術とともに、FRPの積層工程と、実艇の製作工程を熟知した総合技術が求めらる。

Zen30プロジェクトは、私自身のヨットを造ることであるが、ヨットのモールド開発技術を継承していくことがもう一つの目標である。

 

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