Zen30 (3)ヨットの個性への追求と実現

3. 船を知ること

どんな船にも個性がある。人間の個性が、何か突発した時にムキ出しになるのと同じに、船の個性もショックの瞬間に明るみに出る。
例えば、ブローを喰った瞬間に、脱兎のように前へ飛び出して行く船、ひとまずヒールしてから、 1テンポ後れて悠然と加速する船、直ぐさま、気違いのようにラフして止まってしまう船、深々とヒールして最敬礼するだけで、いっこうに前へ出て行かない船、など、「無くて七癖」と云われる人間達によく似ている。

また、波を乗り越える瞬間にしても、上り姿勢のままで空中に乗り出し、大きく振りかぶるようなモーションを付けて、パンチングする船があるかと思うと、他方には、波頭で素早く身を翻えして滑降姿勢に切り替え、パンチングする事もなく、一気に次の昇り坂を目指して加速して行く船もある。そうかと思うと、波頭でグラリとローリングする船や、クルリと向きを変える船もある。

さらに操舵のセンスに至っては、ジャジャ馬、ゴテ牛、C調、オッチョコ、ツムジ曲り、ヘソ曲り、 等々から イエスマン型、優等生型、ジェントルマン型、聖人君子型に至るまで、それこそ、人間の類型に匹敵するほどの多様なパターンがある。

船の個性の中で最も興味深く、最も鋭く船の運命を決定するのは、強風中の個性と波浪中の個性なのだが、それに触れるチャンスには、なかなか恵まれない。
それはちょうど人間の場合に、激怒した時の個性や生死の境に立った時の個性が、 自分にさえも知り難いのと似ている。

 

「ヨットの設計」 舵社刊 横山晃著 昭和55年 から一部抜粋修正

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