ACC長距離航海に、6名のチャレンジャーが参加

危険な航海と知ってチャレンジする

ACCコースはASAトレーニングコースの中では、最上位のクラスの一つである。そのトレーニング目標は、いかなる天候下でも、安全に目的港へ航海することとなっている。
しかし5月は、メイストームといわれるように、天候の変化が激しく、嵐も多いので海難の多発シーズンとして知られている。
「来たらざるを恃むなかれ、待つあるを恃むべし」。
嵐が来ないように願うのではなく、来ても備えがあることを頼りにせよ、ヨットの設計家横山晃先生の座右銘である。まさに備えが整っているかを試される多難なACCコースとなった。

ここでは6名のチャレンジャーの過酷な航海が、いかにセーリングの技術習得に寄与するかを見ていただきたい。強風に見舞われた未知の海域の航海では、勇気と決断が問われる場に絶え間なく遭遇する。スキッパーとして一人前になるためには、その経験が欠かせないことを少しでも知っていただきたい。

第1レグ 5/4~5/5 田尻マリーナから徳島・伊島へ

集合時刻は19時であるが、午後にはすでに受講生が教室へ集まり始めている。事前の課題に取り組み、お互いに意見交換をしているようだ。
3名づつにチーム分けを行い、レグごとのスキッパーとクルーを決める。第一レグの航海計画はA, Bの両チームごとに立て、チャート(海図)上でディスカッションを行う。夜間航海であり、南風30ノット(15m)の強風が予報されている。寒冷前線が通過後は風向が北西に急変する。
風向の変化を、いかに有利に利用するコース計画ができるかが腕の見せ所である。海上気象予報、潮汐アプリ、Windyなどを駆使して、真剣で激しい意見交換が行われる。由良の瀬戸側は広いが、本船の航路内をタッキングして登っていくことになるので、夜間の強風時には危険を伴う。検討の結果、加太ノ瀬戸を通る南下コースが採用された。
航海計画は「安全確保」と「最短コース」の両方を追求する。両者は相反すると思われがちであるが、両立を図らねばならない。

 

伊島を視認、レギュラージブへ交換する
寒冷前線通過後の北西風を受けて快走する

第2レグ 5/5 伊島から和歌山阿尾港へ

・出港前には、スキッパーから第2レグの航海計画に沿った気象予報と、役割分担のブリーフィングがある。
第2レグは第1レグとは打って変わり、穏やかな好天となる。微風を受けてのセーリング練習を続けるが、やがてべたなぎだ。風が吹き出す兆候を1時間ほど待っていたが、とうとう機走に切り替えて日御碕へ向かう。

阿尾港の沖合hには中ノ瀬が孤立障害標識で示されている。周囲に隠れている暗岩をかわして入港だ。港内は釣り人が多く、アンカリングの適地が限られる。アンカリングは一度で決める必要があるので、交代で練習を繰り返す。

・宿でまずお風呂に入る。夕食までは第2レグの反省と、明日の第3レグの航海計画を立てる時間だ。夕食後は、ACC卒業テストが待っている。

第3レグ 5/6 阿尾港から田尻マリーナへ帰港

・第3レグは通過する南岸低気圧の影響下にあり、北風30ノットの予報が出ている。しかも雨で濃霧注意報が発令されている。視界が制限されるに違いない。ベアリングを取る際の目標物を判別するのもむつかしくなる。
その中を、出航後はずーとクロースホールドで北上しなければならないので、苦しい航海が待っている。

紀伊水道から由良の瀬戸を超え、大阪湾へ戻る。これで一息つける。あとは田尻マリーナへ帰港するだけだ。

コメント1 ACC長距離航海に、6名のチャレンジャーが参加

  1. 強風警報,濃霧注意報(警報?)で本当に陸地が見えない中,タックしながらDRで風上に上るなどということはあまりやったことがありませんでしたが,霧が晴れて陸地が見えてきて,ほぼ予想通りの位置であることが分かった時はホッとしました.いい経験になりました.ありがとうございました.

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